研究概要 |
「科学的に示された事実」と称するためには一定の手続きが必要である.仮説形成・実験による仮説検証,多くの科学者の手によるレビューと追試実験という客観科学的な手法を通して新しい理論が形成されること,そして既存の理論が覆されるためには,これまでの積み重ねを明確に否定する仮説(およびその証拠となる実験結果)が多くの専門家の間で共有される必要があることを理解するだけでも,日常の多くのケースで適切な判断が可能になるだろう.広告やテレビの情報番組で紹介される製品および理論が「科学的に確からしい」「科学的にはまだ検討段階」「科学的に明らかに間違い」のいずれの状態であるのかを,より確実に判断できる力,いわば広義の「科学リテラシー」の獲得を目指すカリキュラムを開発することが本研究の最も大きな目標である. 本研究代表者は,実際の科学者が研究している題材や自然科学における事象から重要な部分のみを抽出したシミュレータを学習者に呈示し,そのシミュレータ上で仮説形成・検証プロセスを遂行させることで,科学的研究手法に対する理解を深めることができるシステムを既に構築している. 当該年度は,学習支援システムの根幹部分であるWebベースのシステムについて,授業の中で利用することでその実用性を確認した.Webベースのシステムは,教師が授業の中に導入しやすいだけでなく,学生が自宅学習で利用できるなど利便性は高い.しかし一方で,授業などで学生が一度にサーバーにアクセスするために,その負荷に耐えうるシステムでなくてはならず,実際の授業で学生がストレスなく利用できるという実用性の確認は,今後の研究進行において確かめておかなくてはならない課題であった.授業における利用の結果,多人数の授業でも実用上十分な動作が確認された. 以上の結果は国際学会で発表を行った.そして論文にまとめ,論文誌に投稿中である.
|