研究概要 |
「科学的に示された事実」と称するためには一定の手続きが必要である.仮説形成・実験による仮説検証,多くの科学者の手によるレビューと追試実験という客観科学的な手法を通して新しい理論が形成されること,そして既存の理論が覆されるためには,これまでの積み重ねを明確に否定する仮説(およびその証拠となる実験結果)が多くの専門家の間で共有される必要があることを理解するだけでも,日常の多くのケースで「科学的」であるかどうかおおよその判断が可能になるだろう.広告やテレビの情報番組で紹介される製品および理論が「科学的に確からしい」「科学的にはまだ検討段階」「科学的に明らかに間違い」のいずれの状態であるのかを,より確実に判断できる力,いわば広義の「科学リテラシー」の獲得を目指すカリキュラムを開発することが本研究の最も大きな目標である. このカリキュラム開発の特徴として,学習科学を理論的な背景とした探求型共同学習,その探求を実時間内で実現するために教育工学を背景としたコンピュータ上のマイクロワールドの利用,そして,カリキュラム開発に用いる手法として,カリキュラム設計論の一つである「逆向き設計」論を用いることの三点が挙げられる.いわば,学習科学,教育工学,カリキュラム設計論の融合による評価にもとづくカリキュラム開発とその実践がこの研究の主題となる. 具体的な研究計画としては,研究期間の前半で,(1)「科学的研究手法に関する知識の解明と系統立てた整理」と(2)「段階ごとに分けた知識を学習支援システムに実装」という二つの目的の同時並行的かつ再帰的な達成を目指し,研究期間の後半では,(3)「得られた知見をもとにカリキュラムとしての完成度を高める」.そのために,カリキュラム設計論である「逆向き設計」論を用いたカリキュラム開発を推進する.カリキュラムの完成度を高めることにより,(4)最終的なシステムとカリキュラムの一般公開を目指す.
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