本研究では、学校制度の構成を規定している「教育費の集約経路」「公立学校と私立学校の構成」「地域住民の教育への通念」の三つの条件を歴史研究と意識調査からそれぞれ検証した。 歴史研究では、兵庫県、高知県、大阪府、福岡県、茨城県を対象とし、公立学校と私立学校の両存を支持する対象地域特有の「教育費の集約経路」が存在していたことを指摘した。 なお、対象地域のうち、茨城県は計画書で対象地にした愛知県の代わりに対象とした。理由は、現在の学校設置を考える上で、より重要性の高い航空自衛隊基地周辺地区での学校整備の補助金を調べるためである。その成果として、これまで不明であった防衛省と市町村教育行政との行政手続きおよび実施状況を明らかにし、文部科学省以外の省庁と市町村教育行政の関係性から学校設置をとらえなおすことの意義を指摘した。 「地域住民の教育への通念」を調べる意識調査は兵庫県の高等学校5校から許可を得て実施した。当初の予定通り大規模な意識調査を実施し、863の配布に対して861人の生徒と210人の保護者から回答を得た。その成果として、通学区域の広域化を容認しても選択肢が増えることを志向する生徒と保護者の意識を明らかにした。また調査結果を広報用科研報告書としてまとめ、研究成果が還元されるように調査対象校および教育行政関係諸機関へ献本した。
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