平成20年度の研究では、まず第1に、保護者が学校を信頼する理由が解明された。事例校の保護者を対象とする調査結果には、学校信頼の決定要因としての充実感と誠実さが析出されている。保護者が学校組織に関与した際に、徒労感ではなく充実感を味わうことができたかどうか、また、保護者と教職員との相互作用において誠実性を感じることができたかどうかが学校信頼の重要な決定要因となっている。特に前者の結果については、学校行事やPTA活動の抜本的見直しを示唆するものとなっている。 第2に、保護者との信頼構築を促進する組織システム特性が解明された。ポイントは次のふたつである。ひとつは、学年チームの機能である。学年教師の効力感が高く、知識の共有化や相互支援がうまく機能している場合、その学年では信頼を獲得しやすい。学年チームの協働体制が保護者の学校信頼に影響を及ぼしている。もうひとつは、校長・教頭・教務主任等のチームリーダーシップである。これらのトップマネジメントチームのメンバーが協働関係を形成している学校組織では、保護者との信頼関係が良好である。学年主任がトップマネジメントチームと学年チームの両方に関わり、関係を整合化することの意義を指摘することができる。 第3に、信頼構築効果を検証するためのデータ収集(18校 ; 小学校10校・中学校8校)に成功した。2年目に同様の調査を行うことで、信頼と学力についての因果関係を視野に入れた分析が可能となる。
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