これまで学校の危機管理やリスクマネジメントに関連した研究としては、いじめや学校事故等に関して個別の裁判例の分析や不審者や災害への具体的対応に関する実践研究が中心であり、学校経営並びに教育制度的側面からの研究は、あまり注目されてこなかった。そこでこのような側面から学校の危機管理及びリスクマネジメントに関する研究を進めるため、本年度は、まず学校の危機管理に関する資料の他、危機管理論やリスクマネジメント論に関連する資料や先行研究を収集し、その整理を行った。 また、オンラインデータベースや裁判例集等から、学校において、児童・生徒が加害者や被害者となった事件と事故に関する裁判例を収集し分析した。現段階では個々の裁判例における争点の分析が中心であるが、一方で、収集した判例の時系列的分析を進めつつある。この分析から、教育委員会及び学校に対して求められる安全配慮義務内容の変化が明らかになることが予想される。 平成21年度に実施予定のアンケート調査項目を作成するため、教育委員会指導主事及び校長、教諭へのインタビュー調査を実施した。学校の危機管理に関する現状把握や、学校に課せられた安全配慮義務に対する認識に注目した調査はこれまでほとんど行われていない。教育委員会の指導主事や校長、教諭の協力を得ることができ、現状をより厳密に把握することが可能となったと考える。校長への質問紙による調査を計画通り平成21年度中に実施するために、現在、インタビュー調査の結果を質問紙に具体的に反映させる作業を進めている。
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