平成20年度は、まずアメリカの教員養成機関における組織的評価・改善システムに関する文献・資料を検討し、その特徴を抽出した。組織的評価・改善システムを支える構造としては、例えば全学的組織からの支援、評価に特化した組織、会議の実質化、学校現場との連携といった点が指摘できた。また実際の評価や改善のプロセスとしては(教員養成担当教員、その他の教員、学校現場の教員という三者間の)協働、コミュニケーション、そして一人一人の教員や大学全体のコミットメントという三つの要素が明らかになった。 これらの特徴の実態をさらに詳しく検討するために、2009年1月25日から1週間アメリカに滞在し、現地の教員養成機関(ウィスコンシン大ミルウォーキー校およびイリノイ大学シカゴ校)の関係者にヒアリング調査を実施した。特にイリノイ大学シカゴ校では、組織的評価・改善の役割を中心的担う「教師教育審議会」の代表にインタビューを行い、教員養成機関の学生の成果の測定の方法、その結果の改善への活かし方、教員間のコミュニケーションの図り方などについての意見をうかがった。これらの調査結果に関しては、現在分析中であり、平成21年度の早いうちに結果をまとめる予定である。 日本の状況については、先行研究をまとめると共に、教員養成分野において組織的評価・改善システムが必要となってくる背景の整理を行った。具体的には、教職課程の質保証が求められていること、教職大学院の認証評価が始まること、教員免許更新制に伴う教職課程経営の重要性が増すことなどが指摘できた。これらの背景を踏まえた上で、平成21年度のアンケート調査の実施に向けて、質問項目の検討を始めた。
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