平成21年度は、昨年度に解明した米国の教員養成機関における組織的評価・改善システムの特徴を基に、日本の現状を把握すべくアンケート調査(郵送法)を9月から10月にかけて実施した。対象は、組織としての独立性が強い小学校教諭免許状(第一種)の教職課程を有する国公私立大学171校とした。調査項目として、教育の質保証の取り組み、学生の学習成果の把握の取り組み、両取り組みにおける課題を設定した。有効回収数は85票で回収率は、48.6%であった。 調査の結果より、以下のような状況が明らかになった。(1)アドミッションポリシーやディプロマポリシーに比べると、卒業時のスタンダードを策定している大学が少ない。(2)卒業生や卒業生の就職先学校への意見聴取といった現場に役立っているかどうかの成果把握の取り組みを行っている所は少ない。(3)学習成果の把握として、ポートフォリオの作成や教職指導の充実が特に重要だと認識されている。(4)質保証や学習成果の把握の取り組みにおいて、教員の積極的なコミットメントだけでなく、物理的な環境整備(担当教職員の確保等)も重要だと認識されている。これらの結果については『集計結果報告』をまとめ、質問紙を郵送した171校にフィードバックした。 このアンケート調査の結果を踏まえ、フォローアップとして米国の教員養成機関へのインタビュー調査も行った。具体的には、組織的評価の推進という観点から、具体的にどのような取り組みを行っているのかを尋ねた。訪問先は、ニューヨーク大学、ニューヨーク市立大学シティ校、マンハッタンビルカレッジ、コロンビア大学ティーチャーズカレッジである。インタビュー調査では、value-added assessmentといった新しい評価を利用した成果の測定を試みたり、電子ポートフォリオを積極的に活用したりといった現状を明らかにすることができた。
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