本研究の目的は、広域自治体、基礎自治体が実施する「学力調査」事業に照準し、事業の展開過程をインテンシブに調査・分析することによって、大学の教育研究活動を通した地域貢献・社会貢献の動態を解明することである。 この目的を達成するため、平成20年度に本研究へのご協力をいただいた広域自治体、基礎自治体を含め、引き続き報告書等の資料を収集し、整理を行った。同時に、町村を除いた地方自治体の学力調査の担当者を対象とした質問紙調査を実施し、回収された調査票をもとにデータベース化した。なお、主要な結果は速報にまとめ、本研究にご協力をいただいた地方自治体等に配布した。 データベースを用いて、主として以下の分析に取組み、重要な知見を得た。(1)全国学力・学習状況調査とさほど変わらない内容になっていることから、地方自治体が独自に実施する学力調査は、「ローカル・オプティマム(地域に応じた最適性)」の分析にとって十分に耐えうるものではない。(2)大学・短大等の研究者が少なからず地方自治体における学力調査に委員等として関与していることから、大学・短大等の研究者、ひいては大学の教育研究は、学力調査の展開過程で一定の役割を果たしたといえる。だが、大学・短大等の研究者を学力調査に動員しているのは、規模の大きい地方自治体に偏っており、人的資源の動員力には地域間格差があることが判明した。 以上の研究成果は、日本高等教育学会第13回大会、日本教育学会第69回大会にて発表することを予定している。
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