今年度は、市民主導型生涯学習事業の一類型であゐ市民行講師制を取り入れてしる自治体に対する訪問調査を中心に、都市郊外および都市中心部においてボランティア・NPOが生涯学習事業を実施している事例への訪問調査も実施した。 まず、市民講師制を導入している事例として、清見潟大学塾(静岡市)、東海道金谷宿大学(金谷町)、よねざわ鷹山大学(米沢市)、TAMA市民塾(府中市)に訪問調査を行った。「市民講師制」とは、教えることのできる知識や特技があれば誰でも講師となって公民館や生涯学習センターで教えることができるというシステムである。従来から、公設民営型と公設公営型に分けられることは指摘されてきたが、今回の調査を通じて、特に公設民営型の場合、清見潟大学塾のように組織の努力を通じて次第に独立性を高めていった事例もあれば、TAMA市民塾のように、複数の自治体が出資する財団が所管するという独自の性質上、自治体からの独立性が保持されているという事例もあり、より細分化した形でとらえうることを明らかにした。特に、清見潟大学塾の事例については、広く知られた事例であることに鑑み、雑結論文(2009年3月)にて研究成果を報告している。 また、市民講師制ではないが、市民主導型の生涯学習事業の事例として、加須市生涯学習セミナー(加須市)、および、みさと生涯学習ネットワーク(三郷市)への訪問調査を実施した。これらは、都市郊外型とでも言うべき固有の人口動態のなかで独自の生涯学習事業を展開している点に特徴を持つものであった。 最後に、行政との関わりを持たない、市民主導型の生涯学習事業の事例として、NPO法人神田雑学大学、およびNPO法人東京自由大学への訪問調査を実施した。これらの事業を支えている人々は、地域性に依らず、個別の学習ニーズにもとづいたアソシエーションとして事業を実施しており、都市中心部型とでも言うべき特徴を持つものであった。 なお、高校教育改革に関する講演依頼があり、高校段階で学校・家庭・地域社会の連携の構築に取り組んでいる米国のNPOについて講演を行った。
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