今年度は、(1)ボランティア・NPOの活用を通じて「地域づくり」や住民治に取り組む治体への訪問調査、(2)生涯学習・社会教育分野と政治学分野におけるボランティア概念との関係の分析、さらに、(3)米国における学校支援NPOの現状に関する分析を行った。 まず、(1)については、定住自立圏構想をかかげて「地域づくり」を行っている下関市への訪問調査を行った。同市は、下関市立大学との連携を通じ、大学にボランティア・NPOに関する専攻を設置するとともに、大学のサテライトを市中心部に置くことで、当該専攻と「地域づくり」とを結びつける取り組みを行っていた。 次に、(2)については、政治学分野において今日「福祉社会」や「定常型社会」という構想が提示され、これがボランティアやボランタリー・アソシエーションを前提にしていることを批判的に検討した。具体的には、日本におけるボランティア概念の定着過程において、生涯学習・社会教育分野におけるボランティア概念の受容が重要な役割を果たしてきたこと、また、その結果、ボランティアの対象領域が広範囲に拡大し、ボランティアが関係する分野の人材育成が容易に「生涯学習事業化」できるようになったことで、むしろ無用な事業が盛り込まれる可能性が高まったことなどを明らかにした。 最後に、(3)については、米国のNPOは日本に比べて民間の財団等の資金が豊富にあるために、多様かつ活発に活動できているという観念があるが、現実には財団等の意向によってNPOの活動が制限されたりしていること、また、特に学校支援分野では、特定の巨大財団が活動内容にまで干渉するようになったことで活動の多様性が大きく制限されるようになっていること、などを明らかにした。
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