研究概要 |
本研究では「NPOにおける雇用の安定及び拡大のための実証的研究」を行なう第一歩として, 個人・世帯属性別にみたボランティア活動の実態とその傾向をボランティア統計(総務省統計局「2006(平成18)年社会生活基本調査報告第2巻全国生活行動編」「2006(平成18)年社会生活基本調査報告第4巻地域生活行動編」の政府統計)から把握した. その結果, 特筆すべきは, ボランティア活動総数は減少したとはいえ, 有配偶者, 有職者, 子育てや介護経験の有るもの, 教育レベルや情報活用力が高いもの, 社会的経済的状況が豊かなものほど, ボランティア活動の行動者率や活動日数が高くなる傾向にあった. つまり, ボランティアの世界にも, 上記に示した配偶者や子ども, 職業等を有するものがより活動を高め, 無いものはより活動を低める, という格差が生じていることが明らかとなった. しかしながら, 本来, ボランティアというものは, 活動を通じて個々人の生活をも豊かにするものである. 例えば, 若年層の活動を通じたキャリア経験, 無職女性や失業者の活動欲への契機, 退職後の引きこもりや認知症の予防, 障がい(児)者の豊かな活動経験と雇用の場等, 多面的な生産的な活動への可能性を秘めている. そこで, 平成21年度は, NPOにおける就業実態の把握をより鮮明にするため, NPOにおける有給職員(常勤, 非常勤), ボランティア(有償, 無償)の相違を, 年齢別・男女別に類型化し, 継続が可能となる条件を調査研究によって構造的に把握したい. その際, 活動を支えてきた人的資源である個人の社会的・経済的条件, 健康状態等, 地域や生活の状況を重視する. さらに, NPO運営者(有給・無給)に必要な各々の能力開発の教育プログラムの試案作成と, ボランティア評価軸の設定及び検討していきたい.
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