本研究では、子どもの事故の問題を、おとなが用意する環境やモノを、子どもがどう受け入れるのか、能動的に活動する子どもと環境とのコンフリクトと捉え、幼児の安全教育のあり方について対物的側面に着目して発達的に検討することを目的とした。 今年度は、1. 保育園に新規に入園した3歳児7名を対象に園舎でのけがの経験、危ないと思う場所、大型遊具の遊び方および保育者が危険と回答した場所についての幼児の危険性の認識についてインタビューを行った。このインタビュー実施の前に、担任の保育士を対象に「園舎で子どもたちにとって危ない場所」や配慮事項などについての質問紙および補足インタビューを行った。2. 昨年度に引き続き、アクティグラフを用いて幼児の活動量の測定を行った。3. 昨年度収集した幼児のインタビューデータの分析を行った。その結果、大人が危険と認識している場所・物についての幼児の認識は、年中(4歳)児から大人と同様の特徴を示すようになることが示唆された。また、「すべり台」の遊び方に注目し、幼児の危険性の認識について、経験したことがある遊び方のバリエーションや「楽しさ」の感情との関連を検討した。その結果、年長児になると、経験の有無や遊び方の楽しさとの関連で、危険性の認識について一貫した傾向が見られるようになること、保育者には「危ない」と認識されているが、幼児にとっては楽しくかつ「危なくない」というような「遊び方」のタイプが明らかにされた。さらに、年少・年中児は、危険な場所・物や白遊び方」について、危ないか危なくないかの二分的認識が特徴であったが、年長児は「赤ちゃんにとっては危ないけど、○○(年長クラス)なら危なくない」などの限定した表現や相対的評価をすることが特徴であった。これらのインタビューデータの分析結果を日本発達心理学にて報告した。
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