本研究では、美術館と公共性の関わりについて美術館建築による開放性の創出に着目し、来館者の観点も取り入れながら考察することを目的とする。そこで、様々な人々が利用しやすい雰囲気や社会に開かれた活動を開放性として定義し、美術館の公共性の保障にむけて美術館建築の果たす効果や役割を分析していく。 そのさい、公共性の理論的枠組みの整理等の理論研究を行うとともに、美術館の事例調査を行い、理論と実践を照らし合わせながら考察する。 特に、美術館建築による開放性の創出について分析する具体的な視点として、第1の「美術館内部の空間構成」、第2の「美術館内部と外部の交差」、第3の「美術館の周辺地域への影響」の三つの観点から考察する。 第1の「美術館内部の空間構成」では、来館者の鑑賞体験と結び付けながら、展示室を含めた内部空間の開放性の生じ方を明らかにする。第2の「美術館内部と外部の交差」では、美術館内部と外部の関係や周辺環境の取り入れ方によって生じる開放性について明らかにする。第3の「美術館の周辺地域への影響」では、まちづくりや地域再生に関わることで生み出される開放性について明らかにする。
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