研究概要 |
本研究は、国内の国際化、多文化化、価値の多様化の進展に伴う規範意識の変化、特に年少者の公共意識の希薄化、「いじめ」、差別といった現代の極めて重要かつ急を要する教育課題に応えるために、近年注目されている「市民性教育/citizenship education」の理論と実践を「自尊感情(self-esteem)」という観点から考察することによって、「日本型市民性教育」の開発を試み上うとするものである。今年度は、昨年度から引き続き在外研究期間中のイギリス滞在を利用、これまでの申請者の研究成果を、英国における市民性教育と「PSHE/Personal social and health education」の理論と実践を準拠枠にして検証を試みた。リーズ大学、Centre for Citizenship and Human Rights Education, School of Educationの人権教育および市民性教育の研究者、Audrey Osler教授に助言を仰ぎながら、市民性教育およびPSHE関連の行政文書、報告書の収集、自尊感情と人権意識・市民意識の関連について文献調査を行った。またリーズ近郊の民族、大種的に多様な学校(Infant school一校、小学校三校、中学校二校)にて、授業時の具体的な教育実践、および授業外の時間における人間関係、教室・学校の雰囲気づくりに見られる配慮などについて質的調査を行った。また、「多様性」「アイデンティティ」「自尊感情」「市民意識」や、これらと関運する教育実践についてどのような考えをもっているか、関係教員(18名)に対し個別インタビューを、中学生7名にグループインタビューを行った。帰国後は収集したデータの整理を行いつつ、イギリスの市民性教育の現状や方向性、PSHEとの関係、自尊感情の位置づけについて、分析を行った(現在も継続中)。
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