20年度、21年度の文献調査をもとに、市民性教育における人権と国際理解教育実践の課題についての論文を執筆し、日本国際理解教育学会学会誌に投稿、掲載が決定した。近年の国際理解教育においては国際的に注目される市民性教育への関心が高いにも関わらず、人権教育の位置づけが極めて曖昧である点を批判的に考察したものである。またイギリスの市民性教育導入の社会的背景やカリキュラムの分析から、道徳教育や人権教育との重なりがどのようにあるのか、どのように異なるのかについて、社団法人部落解放・人権研究所の「人権教育と道徳教育」研究会にて研究発表を行った。新学習指導要領において道徳教育の比重が高くなっている今、この点を整理したことは重要と思われる。春には、お茶の水大学付属小学校の市民性教育の公開授業を見学するとともに、市民性教育の議論が近年活発になっている欧州評議会の市民性教育および人権教育の取り組みについて調査を行うため、イギリスおよびノルウェーにて、研究者らと交流・意見交換を行い、またオスロの欧州評議会の教員養成センターを訪問したことで、一層ヨーロッパと日本における市民性教育の捉え方の違いが浮き彫りになり、今後日本の市民性教育を検討する上で「批判的思考」や「権力関係論」は欠かせない要素であることが明らかとなった。22年度は21年度後半に英国で集めたデータの整理に予想以上に時間を費やさねばならなかったことと、成果発表に専念したことで、当初計画していた、日本における市民性教育の仮説としてのカリキュラムの検討や、それを私学の小・中・高校一貫校で実践しながら検証するまでには至らなかったが、この点については、23年度の課題としたい。
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