当該年度め研究計画に従い、研究に要する資料の収集・整理及び検討を行った。研究の進行過程において、社会福祉の哲学・思想に関する資料の不足や入手困難等の問題が明らかになったが、こちらは相互利用を活用することで概ね補完できたと考える。17~18世紀スイスの時代考証に資する史的資料については、当然ながら国内での入手が困難なものが散見された。こちらは次年度、現地において収集する予定である。しかし、照会の時点では入手可であったものが手続きの過程で在庫切れや絶版(再版未定)となるなど、必要な資料の数点が当該年度に購入できなかった。検討を急ぐものについては相互利用にて入手した。また、図書館等にも照会し、文献リストを作成し直した。 当該年度では、入手できた資料から随時検討し、差し当りの成果を所属研究機関の研究紀要(査読有)にて発表した。論文の主旨は、ペスタロッチーの人間観に教育と福祉の原理的融合を支える哲学の所在を求めるというものであったが、査読を通して、社会福祉学を専門とする教員の助言や指導を受けることができた。このことは、本研究課題の意義や重要性に連なるところの論点に対し、一応の評価が得られたものと考える。 資料の整理・検討、及び成果をまとめる作業は、現在も引き続き行っている。特に、当該年度の課題の一つであった、児童福祉の開拓者・実践者らにおけるペスタロッチー受容のあり方については、石井十次、留岡幸助らに関する先行研究を洗い直すとともに、彼らの自伝や社会福祉(児童福祉)の理念、哲学、思想等に関わる基礎的な文献を入手し、分析・検討を進めている。先行研究に共通する着眼点に対し、教育学の視座から見えてくるもの、指摘しうることなどを拾い上げることで、新たな見方が提示できればと考える。その成果の発表は、次年度(平成22年度)秋~冬の学会発表、あるいは論文(査読有)にて行う予定である。
|