今年度はまず、前年度に続いて大学および大学教員のエートスに関わる先行文献研究を実施した。具体的には、大学教員および大学教授職の研究、学術(academic)およびアカデミア(academia)については豊富な研究蓄積があるため、まずそれら先行研究を対象に、地域・社会連携に関わる関連諸概念との関係で、歴史・文化的に何が大学教員エートスとして強調あるいは前提とされてきたのか、それは変容したのかについて基礎的分析をおこなった。 また、実際の大学教員の活動や経歴、地域・社会との連携・交流への関与を明らかにするために、教員対象の質問紙調査と連携実施組織に対するヒアリング調査を試みた。これらは、大学教員の実際の地域・社会との連携・交流実態の把握と同時に、ここ10年ほどの我が国における大学と地域・社会との連携強化への「外圧」および政策誘導に伴って進んだと想定される大学教員エートスの多様化について把握し、さらには組織としての地域・社会との連携に対する教員の関与がどのように変化したのか(あるいは変化しなかったのか)について把握するためのものである。分析のとりまとめに多少時間を有しているが、成果発表は今後も積極的に行うことにしており、その際、我が国の大学システムへの制度的影響が強い諸外国(米・英・独)においても同じような傾向が認められるかどうかについて各国の専門研究者と意見交換をおこなって得た成果も加え、発表内容の精度を高める工夫をしている。
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