本研究の目的は、アメリカの大学の中でも、とくに授業料依存型の財務構造をもつ大学における経営戦略の実態を明らかにし、日本の大学経営に対する具体的な示唆を導きだすことにある。アメリカの私立大学のなかでも、潤沢な基本財産をもつ大学に注目が集まりがちだが、アメリカにおいても数の上では大半を占める授業料依存型の私立大学である。 こうしたタイプの大学の多くは研究機能より教育機能で個別化戦略を立てていることが多い。そこで、アメリカで近年盛んにおこなわれている学生の学習状況調査(とくにインディアナ大学が行っているNational Survey of Student Engagementを中心に検討)で高い評価を上げている大学を探し、その中から、授業料依存率の高い大学をいくつか抽出してその特徴を検討した。教学補助部門の役割、そこで働く専門スタッフの位置づけ等も検討した。ただし、アメリカと日本では、ガバナンス構造が異なるため、このモデルを日本に適用すればよいわけではない。 こうした成果の一部については、(学会ではないが、大学関係者の専門家が集まる複数の機会で)口頭発表を行ったが、本格的なまとめは現在、行っている最中である。本研究ではいくつかの事例をとりあげ検討したものの、バラエティの大きいアメリカの大学について全体的な動向を把握するところには至っておらず、この点については引き続き研究を行う予定である。
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