本年度は、米国アクレディテーションの制度に関する現状の解明と、近年、新たに重要な課題として登場してきたラーニングアウトカム(学生の学習成果)の現状の解明に取り組んだ。 前者については、アクレディテーションの全体像、およびアクレディテーション団体に対する認証制度について明らかにすると同時に、機関別・専門分野別アクレディテーションの概要について分析を行った。さらに、アクレディテーションを含めた米国高等教育の質保証の構造についてその全体像を把握するための検討を行った。 後者については、なぜラーニングアウトカムが求められるようになったのか、どのような主体がどのようなかたちでその動きに関わっているのかについて考察した上で、機関別・専門分野別アクレディテーションの個別の事例を取り上げて検討を行った。その結果、ラーニングアウトカムの重要性については大学内外である程度の合意が得られつつあるものの、その内実にはかなりの幅が認められ、それゆえ、ラーニングアウトカムに対する捉え方には多様性があることが明らかとなった。 以上、本研究で明らかにしてきた課題は、大学評価が法制化され、その本格的な取り組みがはじまると同時に、すでに現状に対する見直しが進められつつある日本の現状に照らして、さまざまな示唆を持つ。質保証の構造とそこにどのような主体が関わるのかという点は、政府主導で評価の枠組みが構築されつつある日本の現状に対して、大学の主体的な関与の重要性を示唆する。また、ラーニングアウトカム測定の必要性は日本でも各所で論じられてはいるが、その実態はいまだ不透明であり、米国の現状はラーニングアウトカムの内実について検討していく上で参考となる。
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