本研究の目的は、いじめの渦中にある小・中学生を対象とした調査をもとに、いじめ傍観者の被害者への援助抑制理由と、その規定要因を明らかにすることにある。平成20年度においては、次の3点について検討を行った。 第1に、いじめに関する先行研究の収集およびその整理である。国内の論文については、「CiNii」(論文情報ナビゲータ)で検索した結果(大学紀要と学会誌に限定)にもとづき収集した。また、国内の学術論文だけではなく、国内の書籍や海外の書籍も収集した。これらを読み進め整理していくなかで、先行研究における本研究の位置づけを明確にした。 第2に、大学生を対象とした質問紙調査の分析である。子どもたちを対象に調査を実施する前に、手始めとして大学生を対象に同種の回顧調査を実施し、その分析を行った。結果、(1)いじめを目撃した経験を有する者は過半数を占めており、彼らの多くは傍観的な態度をとっていたこと、(2)一口に傍観者といっても、いじめを傍観した理由は多岐にわたっていること、(3)いじめを傍観した理由には、目撃したいじめの具体的状況(いじめを目撃した際のクラスイメージ、被害者の特性など)や、目撃者の過去のいじめとの接触経験(被害経験、加害経験)が影響を及ぼしていること、などが明らかとなった。分析結果をまとめた論文については、日本子ども社会学会に投稿し、学会誌に掲載された。 第3に、小・中学生を象とした質問紙調査の作成である。これについては現在作成中であるが、できる限り早く完成させ、調査を実施したいと考えている。
|