本研究の目的は、中学生を対象とした質問紙調査をもとに、子どもたちがいじめを傍観した理由と、それらの理由に影響を及ぼす要因を明らかにすることにある。 先行研究にもいじめ傍観者の意識に着目した研究はあるものの、次のような問題点がある。第1に、架空エピソードを用いた研究が多い、ということである。架空エピソードを用いた場合、いじめの具体的状況を統制できるという利点があるものの、子どもたちは社会的に望ましい回答をする可能性がある。第2に、実際にいじめを目撃した経験を有する者を対象とした調査研究があるものの、それらは大学生を対象としている、ということである。その場合、時間の経過により経験が質的に再構成されている可能性がある。そこで、本研究では、実際にいじめを目撃した経験を有する中学生を対象に調査を行った。調査対象は北陸地方の公立中学校4校に在籍する生徒697名(分析対象は回答に不備があった者を除いた465名)であり、調査の実施時期は平成21年12月である。 分析を行った結果、(1)子どもたちの多くは、被害者への援助行動を行う以上に、傍観的態度をとる傾向にあること、(2)いじめを傍観した理由としては、"被害者を多少なりとも助けてあげたいと思いつつも自分が新たな標的となることが怖いから"と考えている者が多い一方で、"被害者にも非があるから"と考えている者も多いこと、(3)教師への反感を抱いている子どもたちは、"被害者にも非があるから"、"いじめを見るのが楽しいから・面白いから"という理由からいじめを傍観する傾向にあること、(4)非行傾向にある子どもたちは、"いじめを見るのが楽しいから・面白いから"という理由からいじめを傍観する傾向にあること、などが明らかとなった。 調査協力校には調査結果をまとめた報告書を提出した。また、研究論文を執筆し、日本生徒指導学会に投稿した。現在は審査結果を待っている状況である。
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