本研究の目的は、いじめ傍観者の被害者への援助抑制理由と、その規定要因を明らかにすることにある。 調査は2度実施した。第1回調査は、314人の大学生を対象に実施した。分析を行った結果明らかとなったことは、次の3点に要約される。第1に、大学生の53.5%が過去にいじめを目撃した経験を有していること、である。 第2に、いじめを目撃した者の多くは傍観的態度をとっていること、である。 第3に、いじめを傍観した理由は、大別して「いじめへの恐怖」(被害者を多少なりとも助けてあげたいと思いつつも、加害者やあらたないじめの標的となることを恐れている)、「関与の否定」(身近で起こっているいじめを自分と切り離して考え、いじめへの関わりを拒否している)、「被害者への帰属」(被害者に非があると考えている)、「事態の楽観視」(目撃したいじめをそれほど重く受け止めていない)、「快楽的動機」(いじめを見るのを楽しんだり、おもしろがったりしている)の5つに分けられること、である。 第4に、いじめを傍観した理由には、性別や自分が所属していたクラスに対する否定的なイメージ、被害者に対する印象、過去のいじめとの接触経験が影響を及ぼしていること、である。 一方、第2回調査は、697名の中学生を対象に実施した。分析の対象としたのは、回答に不備にある者を除いた465名である。中学生を対象とした主たる理由は、いじめの渦中にある中学生を対象とすることによって、経験が質的に再構成されている可能性を減じられると考えたからである。なお、第2回調査では、いじめを目撃した当時の学校生活の様子もいじめを傍観する理由に影響を与えると考え、質問紙にいじめを目撃した当時の学校生活の様子に関する項目を追加した。 分析を行った結果明らかとなったことは、次の4点に要約される。第1に、中学生の52.7%がいじめを目撃した経験を有していること、である。 第2に、いじめを目撃した者の多くは傍観的態度をとっていること、である。 第3に、いじめを傍観した理由は、大別して「いじめへの恐怖」(被害者を多少なりとも助けてあげたいと思いつつも、加害者やあらたないじめの標的となることを恐れている)、「被害者への帰属」(被害者に非があると考えている)、「快楽的動機」(いじめを見るのを楽しんだり、おもしろがったりしている)、「関与の否定」(身近で起こっているいじめを自分と切り離して考え、いじめへの関わりを拒否している)、「事態の楽観視」(目撃したいじめをそれほど重く受け止めていない)、の5つに分けられること、である。 第4に、いじめを傍観した理由には、逸脱傾向にあることや自分が所属していたクラスに対する否定的なイメージ、いじめに積極的に関与する者の人数、被害者や加害者との親しさ、被害者に対する印象が影響を及ぼしていること、である。なかでも、逸脱傾向にあることは、いじめを傍観した理由のなかでも特に問題視すべき理由ともいえる「被害者への帰属」や「快楽的動機」に影響を及ぼしていた。
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