本研究の目的は、教育基本法、学校教育法、教育職員免許法、食育基本法という、近年制定・改正された4つの法律を取り上げ、その立法過程に見られる子ども観の諸相を、言説分の手法を用いて明らかにすることである。平成20年度には、このうち、学校教育法、一教育職員免許法、食育基本法の3つの分析を終了し、研究論文として発表した。 まず、学校教育法及び教育職員免許法の分析では、(1)子どもの規範意識の現状が極めて悲観的に認識されていること、(2)その背景として「家庭の教育力の低下」が共通認識として形成されていること、(3)それゆえ家庭を肩代わりするものとして学校が位置づけられ、教師には非に高い期待がかけられていることがらかとなった一方、食育基本法の分析では、(1)子どもは将来の医療費の増大や食料自給率の低下をもたらす「リスク・ファクターとして位づけられていること、(2)性別役割分業的な家族へと回帰することが一方で極めて強く望まれていることなどが明らかとなった。 以上の分析より、これまで教育社会学研究において比較的等閑視されてきた立法過程を対象に、子どもにかかわる重要な法律が、どういった家族観や子ども観を背景として成立されているのかを、一定程度明らかにすることができた。
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