本研究の目的は、近年の教育改革の流れのなかで立法された、諸種の教育法規の立法過程(国会での審議過程)を対象に、そこに内在する子ども観の諸相を明らかにすることである。すなわち、どういった子ども観が基調となって、以下で示すような教育法規の立法や改正がなされたのかを明らかにすることが本研究の課題である。教育基本法改正法(平成18年成立)、学校教育法改正法(平成19年成立)、教育職員免許法改正法(平成19年成立)、食育基本法(平成17年成立)を対象に分析を行った。 その結果、以下の諸点を明らかにすることができた。第1に子どもの現状、特に子どもの規範意識の低下という側面がきわめて悲観的に捉えられていること、第2に子どもの規範意識が低下じた原因として、家庭の教育力の低下言説が大きな力をもっていること、第3にこうした現状や原因論に対応するために、国家が直接家庭教育へ介入できる道筋をつけることや学校教育の機能の拡大が企図されていること。これらを、近年の教育法規の立法過程に内在する共通項として見出すことかできた。 こうした研究成果は、立法過程にまでさかのぼって、教育法規のもつ価値性や傾向性を明らかにしたという点で、教育法学研究や教育改革に関する研究にとって、きわめて意義の大きいものである。また、法律という狭義の制度を対象に、そこに内在する子ども観の諸相を明らかにしたという点で、子ども観研究の進展にとっても重要な意義をもつものといえる。
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