研究概要 |
2009年度は、高度成長期の全国進路指導研究会の職業教育・進路教育に関する史料収集を行い、特に東京都で展開された政策・実践の展開の検討する課題に取り組んだ。ただし、東京都を中心に全国進路指導研究会の当事者にインタビューを複数名に行い、その結果をまとめる予定だったが、全国進路指導研究会の史料を検討する中で、富山県・京都府の地域の進路教育・職業教育の政策と実践の展開が対照的かつ重要な位置づけにあったことが新たに浮かびあがり、当初予定していなかった高度成長期の両府県の職業教育・進路教育の史料収集と当事者へのインタビューを行う必要が生じた。その結果、2010年度に一部研究費を繰り越した。その結果次の成果が得られた。 一つは、富山県の県立図書館ならびに県議会図書館に通い、高度成長期の職業教育政策・実践についての資料を収集した。それらをまとめて、2009年日本教育学会全国大会にて報告を行った。産業の教育への従属という形で批判はされつつも、それが実際にどのような効果をもたらしたのかについてはさほど研究されてこなかった富山県の高度成長期の<学校から職業社会>への移行の実相を、一次資料をもとに分析したものである。例えば、当時職業学科は批判されていたが、生徒は商業課程や工業課程の教育は、職場でも役立つものとして認める傾向にあった。少なくとも、普通課程と比較して、職業課程の方が忌避されていることを示す充分な資料は見つからなかったという結果が浮かび上がった。(報告タイトル)「高度成長期における地域教育計画の展開と若年労働市場-富山県の七一三体制に焦点をあてて」(日本教育学会第68回 口頭発表),2009.)その後、当時富山で教員をやっていた方と連絡をとったが、インタビューをするまでには至らなかった。京都については、京都府の図書館を訪問し、資料収集を行った。 平行して全国進路指導研究会の一次資料の整理をまとめ、論文執筆のための準備を行った。次年度では、収集したデータをもとに、成果を共著書として刊行する予定である。また、バーンスティンの理論枠組みを学校から職業社会への移行を記述するために再構成するための作業にも継続的に取り組み、研究会などで報告を行っており、来年度以降、共著の単行本としてまとめていく予定である。
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