本年度の研究成果・研究実績は以下の通りである。 第一に、保守化・個人化する社会を検討する上で、モダニティに関わる理論的検討を行った。ベック、ギデンズ、バウマンらの諸論を参考に、個人化の進む近代化の過程では保守化が不可避であること、しかしそれを乗り越える鍵として「公共圏」の存在であることを明らかにした。 第二に、高校生における愛国心をめぐる計量社会学的研究である。今回の研究テーマでは、国際試合等における「ぷちナショナリズム」に関わる高校生の意識を計量的に分析した。 第三に、昨今社会問題として注目著しい「ネットいじめ」を対象とする子ども政策のあり方について批判的検討である。ここでは、特に子どもの問題が発生するたびに、それを厳しく規制する全体主義的な政策が登場している。そのひとつが子どものネット社会に対する「監視」の問題である。子どもの諸問題に対する社会の保守的な姿勢が政策の保守化にも直結している可能性を明らかにした。
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