ひきつづき資料調査や情報交換を活動のベースとし、EQARの運用に関するキャッチアップと欧州各国の高等教育制度や質保証制度とその実情を概括的に比較検討する作業をつづけつつ、この視野にアジアも加えた。欧州事情に関しては、EUAを中心に着手されたEQC(European Quality Culture)プロジェクトの第1次報告の公開内容に特に注目し、EUA事務局への訪問調査も実施した。前年度は、質保証団体がESGにどのように対応しているかが焦点となったが、ここでは個別大学のESGに対する対応状況が垣間見える内容となっている。欧州においては質保証システムの導入がはかられて10年に満たないところが多く、一定の普及はみたものの、そこにはまだ課題も多く、個別大学において質保証が有効な形で定着するにはさらなる時間と努力を要することがわかる。それでも、ESGが個別大学のいわば「コンパス」の役割をしており、導入の助力となっている。さらに、質保証システムを自国内に普及定着させるに際して苦労を伴ったとされるスペインの事例にも着目し、訪問調査を実施した。ここでは、たとえば"AUDIT"システムなど、ESGをもとにして自国でのアレンジを加えたシステムの導入が工夫のポイントとして観察できた。つまり、各国質保証制度の中心となる関係団体にとっても、個別の大学にとっても、ESGの存在が一定の有効性をもたらしている。このように、国際的な質保証システムの形成に際して「規準・指針」の存在が予想以上に有効に機能することがわかった。ただし、過年度において病気によりやむを得ず一時的に研究を中断したことが及ぼした時間的な影響が最後まで残り、アジアとの比較検討や日本の実情の調査が当初の目論み通りの十分な完成にまで至れなかった。平成23年度以降、引き続き研究を進める。
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