1. 前年度に実施した第1次調査(自己申告非行32項目、600s)で得られたデータに基づく分析結果を、日本犯罪社会学会で報告した。その概要は下記の通りである。 (1)MINIのL尺度・建前尺度のいずれかが、Z>=70のケースを削除し、残った560sで1人も経験のなかった2項目も削除。残った30項目の加算得点との相関係数が0.2未満の9項目を削除して、残った21項目で尺度を構成した。(2)この21項目にIRT(2パラメータロジスティックモデル)を適用し、もっとも適切な回答のカテゴライズを、テスト情報関数とIRTの適合度指標(BIC)により検討し、「0回/1回/2回/3回以上」が妥当であると判断した。(3)IRTの適用により計算された項目困難度の値から、部品盗、公共物の器物損壊等の非行性が高く、怠学、飲酒等の非行性が低いことが示された。(4)同等の項目困難度であっても項目識別力に違いがあるなど、IRTの利用により自己申告非行尺度の開発に有用な知見を得られることが示唆された。(5)21項目のすべてを用いて尺度を構成したところ、各サンプルのthetaとMINI非行尺度得点(併存的妥当性確認のための外的基準)との相関係数は0.14であり、満足な値とはいえないものの、統計的に有意(p=0.001)な相関が得られた。 2. 自己申告非行の信頼性に関する分析を行う目的で、インターネットを利用した調査方式を採用して、第2次調査を実施した(次年度に分析を行う)。 3. 前年度の先行研究調査によって得られた自己申告非行に関する国内外の研究論文の情報に基づいて、書籍2冊を執筆・出版した(いずれも分担執筆)。 4. 前年度の先行研究調査によって副次的に得られた再非行化要因に関する国内外の研究論文の情報に基づいて、学術論文を執筆・投稿した。当該論文は、査読を経て採択・掲載された。
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