【1】前年度に学会で報告した分析結果を論文にまとめて投稿した。論文は査読を経て、学術誌『犯罪社会学研究』に掲載された。同論文は、自己申告非行尺度の妥当性について論じたものであり、この中で、最終的に21項目からなる自己申告非行尺度が提案され、この尺度が基準関連的に一定の妥当性を有していることが確かめられた。 【2】自己申告非行尺度の信頼性に関する分析を行った(結果を日本社会病理学会大会で報告した)。方法と結果の概要は、下記の通りである。(1)前回調査と同様に、自己申告非行尺度(過去1年間の非行の経験回数を尋ねる形式、32項目)を作成した。調査票にはこの尺度のほか、回答歪曲を検出できるMINIのL尺度・建前尺度(村上1997)を盛り込んだ。(2)オンラインで回答を得る形式で、同一対象者に2度にわたって調査を行うデザインとした。16~18歳の男子に対して行われた第1波調査では、835名から回答を得た。その約1ヶ月後に実施した第2波調査は、第1波調査の回答者に再度の協力を呼びかけて、500名から回答を得た。(3)回答歪曲が疑われるデータ等の削除を経て残った466ケースについて、自己申告非行尺度の信頼性に関する諸指標(第1波調査の回答と第2波調査の回答との相関係数等)を導出した。その結果、一部の項目群では信頼性が相対的にやや低いものの、全項目の経験回数の合計でみると、第1波調査と第2波調査の相関係数は0.78であり、尺度にある程度の信頼性があることがわかった。 【3】前年度までの先行研究調査によって副次的に得られた非行や再非行の要因に関する国内外の学術文献情報等に基づいて、2本の論考を執筆・発表した(内1本は、査読付の学術誌論文)。
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