本研究は、目的(1)一人ひとりの教師が自らの実践課題に即して授業実践を省察、実践していくことを可能にする校内研修のプログラムの在り方について、研究協力校など具体的な事例をもとに検討し、必要となる条件について明らかにすること、目的(2)日常の授業を対象とした校内研修を活性化し、教師相互が省察的に実践を行うことを促す授業の臨床的研究の可能性について検討することを目的として進めてきた。 昨年度は本研究の最終年度にあたるが、これまでと同様に研究協力校における校内授業研究の運営にかかわり、アドバイザーとして参加しながら事例の蒐集・考察を行ってきた。そのなかで個々の教師の実践課題と学校の課題とのすり合わせを図ることを通して具体的な授業改善に向けてのサポートを行った。さらに研究最終年度の検証を目的として研究協力校(中学校)における教師たちに対するアンケート調査を実施した。 以上の結果、次の2点が整理された。 考察(1)具体的な授業の観察においては、児童生徒の学びをどのような視点でみるかについて、校内研究テーマや学校教育目標、各教科の研究テーマと関連づけて教員相互に日常的に協議し、児童生徒の学びをとらえる視点について教師が自覚的になることが、授業づくりにおいて共通する/普遍的な実践的課題を、児童生徒の学びの事実から抽出・整理することを支援することになることが明らかになった。 考察(2)教師の授業実践における固有の課題を明らかにしていく、さらには自身の授業/学習/子ども観を見つめ直していく契機として、具体的な授業実践に関する授業研究の場での教師相互の対話に自ら参加する経験と、同僚や先輩教師からの助言とに、重要な意味を見出している教師の割合が高いことがアンケート結果から明確になった。 今後は本研究の事例に基づく研究成果を複数の論文にまとめ、教師の省察的実践に資する授業研究のデザインについて具体的な問題提起を行っていく予定である。
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