本研究では、特に事中指導の段階において、なんらかの形で話し合いを視覚情報化させる手段を「視覚情報化ツール」と呼び、国語科での指導方法の開発を行った。 前年度は、メモの取り方によって、事後の話し合い報告の記述量に差異が生じるかを分析した。その結果、構造化された図示化のメモ群は、非構造化されたメモを書く総記述化群に比べて、メモの量は少なく済みかつ報告書の記述量は減るわけではないことを明らかにした。 そこで本年度は、メモの取り方によって事後の話し合い報告の内容面に差異が生じるかを分析した。その結果、構造化された図示化のメモは、非構造化された総記述化のメモと報告書の記述量が変わらなかった。それどころか、話し合いの理解内容が、より整理され示されていたといえる。 以上の前年度と本年度の調査の全体を踏まえれば次のような考察を行うことができる。前年度の量的分析からは、図示化群は、総記述化群に比べてメモの量は少なく済み、かつ報告書の記述量が減るわけではない。本年度の質的分析からは、構造化された図示化のメモは、報告書の記述量が変わらないどころか、話し合いの内容が整理されたり、よく理解されたりする可能性が見出された。 すなわち、図示化や省略されたメモであれば、話し合いの事中に協同で書くことも十分に可能である。そればかりか、視覚情報化ツールの使い方やデザインにより、話し合いの認知がよりよく変容する可能性まであるのである。これらの調査によって、視覚情報化ツールの話し合いにおける実践的な可能性が明確になったといえる。
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