本研究は、参加型現代美術作品を用いた体験的鑑賞教育の可能性とその意義を明らかにするための調査及び研究を行うことにある。昨年度から継続して、主に次の2点を調査した。1参加・体験型作品の収蔵状況の調査。2参加型現代美術作品が展示に含まれている展覧会の踏査。1の結果、(1)DB検索において、館又は作品によっては画像が未掲載である。(2)表示されても参加・体験型であるかを判断できない。(3)検索条件によって表示内容に差が生じるなどの問題があることが分かった。これらは収蔵作品のDB化の遅れとともに、デジタルミュージアムのアーキテクチャが未構築に因るものである。従って、各館が発行する収蔵品カタログを参照する必要があることが判明した。 今年度は2の調査対象に参加・体験性を有するアートプロジェクトを加え踏査したが、特に、アーティストユニット「KOSUGE1-16」の追跡調査を行った。対象となった展覧会は、「こども+大人+夏の美術館まいにち、アート!!」(群馬県立近代美術館)での活動『AC-GM5』である。『AC-GM5』を含む参加作家を対象とした教育普及活動、(1)子ども向け鑑賞教育、(2)トーナメント・イベント「AC-GM5杯」、(3)KOSUGEのアーティスト・トークを各々見学、視察、聴講した。(1)では、『AC-GM5』での子どもの様子を、(2)では他館との活動の比較を、(3)では、彼らが企図するアートを通したコミュニケーションの在り方を知ることが出来た。その結果、事前活動や(2)への参加など体験を重視することがKOSUGEの活動を理解する障害となりうるが理解された。このことは、(3)を理解するにはメタ的な視野を持つことの必要性を示唆している。これは本年度の大きな成果であり、今後、考察を深める必要がある。 以上の調査の結果を踏まえて、研究代表者の個展とトークイベントを開催した。トークインベントでは、制作者として鑑賞に対する考えと鑑賞の現場における諸問題を提起することができた。
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