平成22年度は、平成21年度までに調査、記録してきた小・中学校の書くことの指導におけるグループ学習の談話を中心に分析し発表をした。 各校種において実現可能な学習者同士のグループ学習のモデルとして「足場作りの相互作用のサイクル(scaffolding interaction cycle)」を取り上げ、特に「詳細な読み(Detailed Reading)」の段階の「導入(Prepare)」^「認定(Identify)」^「精緻化(Elaborate)」という談話のパターンのあらわれ方について分析した。その結果、「発表(書き手)」^「発問」^「発表者(書き手)の応答」^(「発問」)という展開が確認され、「発表者(書き手)の応答」に続く「発問」がグループ内における話題(題材)の共有に関係していることが認められた。「発表者(書き手)」がグループ学習の過程で自身の考えを維持しようとする場合、他のメンバーからの問いがなくなると発表者(書き手)の役割も完結し、自身の書くことについての変容は生じにくい。「発問」によって開始され、「発表者(書き手)の応答」^(「発問」)の展開において、話題への多様な観点をいかに導入するかが重要となる。中学校よりも小学校の方が「応答」^「発問」の展開における議論が多様であることが認められ、課題の方法と題材・話題についての情報が書かれた文章についての多様な観点の導入と論点の共有に必要となることを談話の過程に即して明らかにした。 また、平成23年度に実施予定の高等学校での指導と調査に向けて、大学生を対象とした同様の指導を行い、校種による授業のスタイルの違いとグループ学習の実現に向けての談話の特徴を整理するための基礎資料を得た。
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