平成22年度は、オランダでのフィールド調査を完了するとともに、これまでの研究成果に基づき、研究代表者の勤務する大学の小学校英語に関する科目において授業改善を行った。フィールド調査においては前年度得た情報を精査した後、オランダの初等教育における英語指導者育成のためのプログラムについて、現地の教員養成機関の担当者との面談を通して各回の講義・演習の内容を含めてより具体的な情報を収集した。このような情報と前年度までの研究成果をもとに、前期15コマの講義、後期15コマの演習のシラバスを開発し、実際に授業を行った。その特徴は次のようなものである。(1)年間を通して参照できる資質・能力チェックシートを学生に配布し、毎回の講義・演習に関連づけて理解度を自己評価させ、授業レポートを書かせた。教員はこのレポートに毎回個別にコメントを付けて学生に返却した。(2)前期の講義は前半に小学校英語の基礎的な事項を解説し、後半に「外国語活動改造プロジェクト」という課題を課し、単元とそれを構成する授業の目標と学習者の特徴を想定した上で、既製の活動をアレンジしたものを発表させた。その際、アレンジによって何を狙ったのかを明確に示すことに留意させた。(3)後期の演習においては、前半に単元・授業の流れを実践的な活動を通して体験させ、後半では受講者はHRT役とALT役になってペアで模擬授業を行い、全員で授業評価と協議を行った。授業評価シートに各自が気づいた点をメモさせ、模擬授業に参加して生じた疑問や課題についての対応を協議した。(1)(2)(3)について学生にアンケート調査を行ったところ、チェックシートに基づく授業レポートと教員からのコメントにより学習目標と理解度が明確になったこと、プロジェクトを通して講義で得た知識をすぐに活用できたこと、模擬授業と協議を通して外国語活動を担当することへの不安がかなり軽減されたこと、などの点で成果が見られた。
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