本研究は、過去の全国各地の学力調査の分析と学力調査の結果の活用した優れた取組を史的・網羅的に取り上げ、学力調査を授業改善に活用するための基礎資料を作成し、成果報告書にまとめ、これからの授業・カリキュラム開発に寄与しようとするものである。昭和20年代は、「なすことによって学ぶ」経験主義の教育が、学力低下などの批判によって系統主義の教育へと転換していく時期である。その中で、授業を改善するための評価としての学力調査や、問題解決能力や判断力を問う学力調査などが行われていた。昭和30年代は、全国各地の教育委員会が基準(基底)教育課程を作成し、カリキュラム評価として学力調査が用いられていることが明らかになった。「全国学力調査」に対して、各地の教育委員会は、奈良県の学力調査などのように作文づくりの過程を問うなど学習の過程を問うものなどがあった。能力表や教育課程を分析し、授業改善のために有効な理論と実践の追究を行うための基礎資料の収集ができた。 特に昭和30年代における学力調査は、児童の実態を把握することで、児童の学習活動の過程に教師が注目する特色をもっていた。また、追跡調査などでは、教師の学習指導の研究だけではなく、学習者の学びの方法についての視点が伺えた。資料収集の成果の一部は、国語教育史学会「国語教育史研究」第11号にてまとめ、昭和20年代と30年代の学力調査に関する資料については報告書にまとめた。
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