昨年度収集した幼稚園での相談事例のべ216ケースをデータベース化し、幼稚園が自発的に発達障害の疑われる子どもへの対応整備を進めていくための要件を分析した。その結果、年間カリキュラムに沿った集団ベースの保育環境を生かした、保育者の視点にたった保育者支援の必要性が明らかになった。明らかな障害の有無にかかわらず、気になる1人1人の子どもを幼稚園が抱え、効果的対応を実践するためのガイドブック「気になる子どもへの保育ヒント集~要因を整理し、環境を見直し、具体的に対応する~」を作成し、幼稚園や巡回相談事業などで活用を開始した。 ガイドブック作成過程で以下の点が明らかになった。(1)アンケート調査結果から、保育者にとって気になる問題群を8項目に整理した(「行動や気持ちの落ち着かなさ」「不安・パニック・情緒的混乱」「子ども同士のトラブルと他害行動」「こだわりに見える行動」「思い通りにいかないと気がすまない」「コミュニケーションや会話の難しさ」「集団行動の苦手さ」「その他」)。(2)216ケースを8項目に分類し、さらに類似するケースから関連する発達的要因、環境因、子どもの素因を分析し40テーマを抽出した。(3)各テーマについて、問題が起こりやすい目安として、年齢、障害の診断の有無、年度内の時期などの特徴を明らかにし、ガイドブックを活用する際の手がかりとした。 このガイドブック活用によって、以下の効果をあげることができる。(1)集団の中で子どもの抱える困難に気づき、周囲の環境も含めて観察して客観的に捉えることができる。(2)集団に対する保育活動の中での支援、および個別的働きかけによる支援、特定の仮説に基づいた技法を用いた支援を総合的に行うことができる。(3)保育者個人だけでなく、幼稚園の体制の中で子どもを抱えていくことが可能になり、保護者への支援や専門機関との連携の円滑化が図れる。
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