平成25年度は、①児童研究所におけるG.S.ホールの役割と運営、②地元教師への研修内容、③遅滞児への相談活動の視点から検討を行った。その成果は、学術雑誌に「クラーク大学児童研究所におけるG.S.ホールと遅滞児の相談・研修活動 : 設立初期(1909~1914年)を中心に」をテーマに投稿した論文の査読・修正を経て、『特殊教育学研究』51 (2 )pp.93-103 への掲載が決定した。その内容は、第一に運営・予算の側面では、児童研究所設立の予算獲得のためにホールが1906年に連邦児童局の研究所へ計画を応募し、1907年には複数の資産家への寄付金の嘆願を行っていた事実を確認した。第二に教師の研修では、クラーク大学教育学科のスタッフと連携しながらホールやバーナムが中心となって現職向けの講座を開き、とくに1909-11年には遅滞児や児童福祉に関する講義が開かれたことが明らかになった。第三に、1910年1月に開始された遅滞児部門の相談活動では、8-12歳児を中心に特別学級や留年を繰り返した子どもの相談や身体・運動・心理的な側面から様々な検査を多角的に行い、本人の特性や興味を考慮して進路先などを助言していたことが分かった。また異常児部門の心理学担当者が欠員になった1910年秋以降は小児科医を中心に対応にあたり、保護者や教師からの直接の相談はホールが書簡を通じて近隣の専門家を紹介していた事実が確認された。 また9月には日本デューイ学会(第57回研究大会・新潟青陵大学大会)において、「デューイ実験学校の現代的意義-デューイ実験学校から学ぶ-」について報告を行った。
|