近年聴覚障害学生を受け入れ支援に乗り出す大学の数が急増し、特にノートテイクやパソコンノートテイクといった文字による支援の広がりが顕となっている。一方、ディスカッションや実習等より現場に即した高度専門教育を受けようとすればするほど、文字ではなく手話による支援の有用性が高まることが指摘されているにもかかわらず、その利用は進んでいない。この理由として、高度な技術を有する手話通訳者が確保しづらいことのほか、より専門性の高い手話通訳者が高等教育現場において通訳を行ったとしても、手話による通訳の特性上、聴覚障害学生の学習を支えるツールとして利用がなされづらいことなどがあげられる。 そこで本研究では、高度専門領域における手話通訳について、聴覚障害学生の学習を支えるという視点から再評価を行い、ここで求められる技術の内容について詳細に明らかにする。加えて、手話通訳のみならず文字によるキーワード提示やスライドの同時提示、文字通訳との併用など、他の情報保障手段との効果的な相互利用を検討することで聴覚障害学生の学習ツールとしての手話通訳の在り方について明らかにすることを目的とする。 なお、本研究の過程では手話通訳と並んで重要な情報保障手段とされるパソコンノートテイクについても表示される情報の特性や必要とされる技術について明らかにし、手話通訳における技術と比較的に検討するものとする。
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