研究概要 |
本研究の目的は,従来の知能検査に関じて,支援技術を適用の有無により被験者の「能力」がどのように変化するのか確認することで,被験者の認知的な困難と支援方法とを対応づけて議論できるような検査手続きを開発することにある. 過去の知見の分析・整理や昨年度までの研究成果より,知能検査の目的が従来の知的障害の有無の確認から,学業および職業場面での適応能力の査定へと変化している現状を考慮する必要が明らかになった.これを踏まえ,本年度では知的発達障害者の学業および就業場面でのつまずきと,必要な支援を簡単に査定するために必要な検査としてどのような課題を行えばよいか検討した. 例えば,学業や就業場面で共通して必要な能力として,1)文章の読み書き2)計算の能力がある.これら基本的能力に関して,従来の知能検査では,なぜ読み書きや計算できないのかといったA)原因の特定ができない,といった問題や,できないことについてB)どうすればそれができるようになるか,といった解決策の提案ができない問題があった.本研究では(A)と(B)の両問題の解決を目指すため,具体的支援の方法が明確になるレベルでの検査課題の特定を試みた.例えば験者の口頭での質問に対して回答できない者であっても,視覚的に質問を提示することで回答できたり,文章を短く区切ることで回答できたりする者がいることがわかった. 結果,全ての問題について必要な課題の特定が完了したわけではないものの,学業・就業に困難がある多くの者に共通する問題が整理できた.次年度はこれらの知見を整理し,学業および就業場面においてのつまずきの原因となる認知的な問題の特定とその支援策を簡便に判定できる知的能力評価法を提言する.
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