研究概要 |
本研究の目的は,従来の知能検査に関して,支援技術を適用の有無により被験者の「能力」がどのように変化するのか確認することで,被験者の認知的な困難と支援方法とを対応づけて議論できるような検査手続きを開発することにある. 2年目までの成果より,以下のことが明らかになった. ・過去の知見の分析・整理や昨年度までの研究成果より,知能検査の目的が従来の知的障害の有無の確認から,学業および職業場面での適応能力の査定へと変化している現状を考慮する必要が明らかになった. ・前記を踏まえ,知的発達障害者の学業および就業場面でのつまずきと,必要な支援を簡単に査定するために必要な検査としてどのような課題を行えばよいか検討した.結果,全ての問題について必要な課題の特定が完了したわけではないものの,学業・就業に困難がある多くの者に共通する問題が整理できた. 本年度はこれまでの知見を総括し,以下の二つの点について検討した. ・学業および就業場面において,つまずきの原因となる認知的困難の特定とその支援策を簡便に判定できる知的能力評価法の開発 ・認知的困難に対する支援技術の適用による具体的な支援の実践 結果,前者については簡便な知的能力評価法の開発には至らなかった.原因は,課題とした知能検査のプロフィール分析と,必要な支援技術を一対一対応させることが困難だったこと,前述のプロフィールだけでは必要な支援技術を提案することが困難だったこと,である.これをふまえ,プロフィールに個別の困り感の聞き取りを加えることで,個人に効果的な支援技術の特定ができることが示唆された,このことより,後者について,支援技術の適用による認知的困難の解消の実践は効果があった.ただし,支援技術の種類と適用場面が多岐に渡るため,効果を数量的なエビデンスをもって評価することは困難であった.以上より,個人ごとに必要な支援技術の簡易アセスメントと,支援技術適用時の量的な効果測定が課題として残った.
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