平成20年度末時点における調査の進捗状況は、実地・インタビュー調査を行った高等専門学校(以下「高専」)が7高専、研修会・電話・e-mail等を通じた限定的な情報交換の対象が26高専である。調査の途中経過より、全国の高専における発達障害のある学生への支援モデルとして、大きく次の3つが考察された。(1)担任や指導教員による環境調整や個人指導の形を取る支援、(2)キーパーソンを中心とした少人数のグループによる「対処」的支援、(3)トップダウンによって組織化されたグループによる、ある程度学内で統一された対応と情報共有が可能な支援、の3タイプである。ほぼ同規模の学生数と教職員数を抱え、同じ5年間一貫教育システムによる早期技術者教育を目指す全国の高専において、各校異なるタイプの支援モデルが採用されている理由は、単に支援体制の整備が過渡的状況にあるためというだけではない。各高専に在籍する発達障害のある学生が抱える困り感の内容にも、高専間でバラつきがあることも要因のひとつである。その内容に応じて、学校が迫られる対応が異なる。現在各校に形成された「支援」体制も、初期段階では、問題を抱える学生に対する「対応」であったケースが多い。例えば、パニックや人間関係のトラブルといった問題への対応から派生した支援は(2)のモデルを取ることが多く、看護師や相談室スタッフがキーパーソンとなっている。レポートの提出や学業不振といった問題が主とされた高専では、担任や指導教員の個別指導に任される(1)のモデルが取られるケースが多い。この場合、教職員の発達障害に対する認識度の格差が、そのまま支援の差となる危険性が残される。今後さらに調査を進め、発達障害のある学生が必要としている支援と、それを実践するために必要な支援体制の関係を明らかにし、それぞれの学校の状況に応じて柔軟に編成できる支援モデルを検討する。
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