本研究では、高等専門学校(以下「高専」)に在学する発達障害のある学生の実態を把握し、表面化する問題を整理した上で、各校で実施されている具体的な支援策をリストアップした。全国51高専のうち、10高専において実地調査を行い、29高専においては電話・メールを通じたヒアリングおよび情報交換によってデータ・資料を収集した。発達障害またはその疑いのある学生は、ほぼ全ての高専の高専に在籍するとみられ、医療機関等による診断のある学生は、その1/3ほどであった。高専1校あたりの在籍数は、主に教員を対象としたヒアリングでは平均4.6人、看護師を対象としたアンケート調査では平均7.5人であった。表面化する問題として最も多くあげられたのは、学業不振の問題で、特に、高専の特色である実験・実習科目において、レポート・課題が提出できないなどの躓きがみられた。評価基準や提出期限が厳格に定められている講義も多く、発達障害のある学生の苦手な面をより際立たせる側面があった。対人関係のトラブルでは、クラスで孤立してしまうケースや、寮生活でのトラブルがみられた。特に寮生活においては、環境の急変や、二人部屋での人間関係など、発達障害のある学生にとってはハードルの高い面がある。その他、適応上の問題や、家庭の問題、問題行動を伴うケース、健康上の問題を伴うケースがあった。卒業後の進路・就職については、どの高専でも問題意識の高いこれからの課題であった。これらの表面化する問題に対して、各校の具体的な支援策を集め、支援リストにまとめた。個人指導や、定期面談、ソーシャルスキルトレーニングや、連絡・伝達手段の工夫、安心できるスペースの確保などの配慮があった。これらの支援策を実現するためにはオーソライズされた組織的支援体制が重要であり、個人頼みの支援から組織的支援への展開が必要であることが確認できた。
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