研究概要 |
NZ Autism Spectrum Disorder Guideline(ニュージーランド自閉症スペクトラム障害ガイドライン)に基づき、自閉症のある子どもとその家族への支援を進めているニュージーランドで開催された自閉症会議(Autism Conference 2010)に参加した。自閉症のある人々への支援体制が必ずしも十分ではない状況では、家族が自閉症について常に正しい知識をもち、家族自身のエンパワーメントを高めること、そのためには教員や支援者等とのパートナーシップが大切であること、身近な人々に自閉症について理解してもらうように家族自身が自閉症についてオープンになることが重要である等、自閉症のある子どもの家族への支援を進めるうえでの示唆を得た。また、都道府県・政令指定都市自閉症協会(計27支部)の両親2,000組(有効回答数は計1,590名、父親731名、母親859名)を対象にアンケート調査を行った結果、(1)父親は、自閉症のある子どもをめぐる家庭内での関係を肯定的に捉えているが、母親ではそうでないとする意識のズレがあること、(2)きょうだいへの対応も両親間で捉え方に違いがあること、(3)両親ともに地域施設の自閉症についての理解・啓発や親同士の交流・相談体制の整備の必要性が高いこと等が明らかとなった。一方、(4)家族のニーズを踏まえた家族支援計画(IFSP)の必要性については、父親は約30%、母親は約50%であり、その必要性は高くなかった。しかし、家庭内での両親間の意識や対応のずれを踏まえると、個々の家族メンバーの思いや直面している問題、また、個々の家族メンバーがライフステージで担うべき役割を把握するために個別家族支援計画を作成することは意義があると考える。また、家族支援計画は、家族のエンパワーメントを促す1つの手だてになると考える。最終年度は、これまで蓄積した知見と、自閉症のある子どもを養育する保護者への聞き取り調査を基に、個別家族支援計画の実用性について検討する。
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