研究概要 |
昨年度,都道府県・政令指定都市自閉症協会計27支部に実施したアンケート調査の結果について,自閉症児・者が示す行動上の問題や彼らが成人して改善した行動とその理由,自閉症児・者の家族が必要としている支援内容に関する自由記述を含めて,さらに詳細な分析を行った。また,分析の観点を拡げ,両親及び自閉症児・者の年代別に加えて(1)子どもの診断名(知的障害の有無)別,(2)(障害のない)きょうだいの有無,(3)両親の健康状態別に分析を行った。加えて,特別支援学校幼稚部での活動や親子教室の参与観察,学齢期以降の自閉症児・者を養育する家族への聞き取り調査を行った。これら調査等から得られた結果や自閉症児・者の家族に関する文献研究,米国で策定されている各州の個別家族サービス計画(IFSP)の様式の分析を通して,個別の家族支援計画に含める視点について検討を進めた。 研究全体を通して,以下のことが明らかとなった。自閉症児・者の家族が抱える心理的な問題は,自閉症児・者の行動への理解や対応の難しさと関連していた。また,これに社会の自閉症への理解の不足によって引き起こされる家族の否定的な感情が複雑に絡み合い,その結果,自閉症児・者を含めた家族の生活を制約していくという一連のつながりが示唆された。自閉症児・者の家族の問題を改善していく糸口となるのは,家族が自閉症児・者への対応を身に付け,自信をもつことである。そのためには,早期から家族が自閉症児・者の指導や支援に主体的に参画することが重要であると考えられる。また,家族メンバーにはライフスステージでそれぞれ担っている役割があり,その役割は流動的なものであること,家族生活に制約がもたらされ易い自閉症児・者の家族においては,彼らの生活の質を向上させるといった視点をもって支援に臨むことが重要である。
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