1998年の鈴木寛氏の研究で残されていたクラス6の例外型非原始的Q-多項式アソシエーションスキームの非存在を田中利恵氏と証明し、非原始的距離正則グラフの構造定理の双対版を完成させた。また、Q-多項式距離正則グラフの部分集合で所謂「幅」及び「双対幅」が最小となるもの(descendentと呼ぶ)の構造理論を展開し、さらに現時点で知られている「古典的パラメータ」を持つ15種類の無限系列全てについてdescendentの分類を完成した。特に、局所的性質であるdescendentの連結性や凸性と大域的情報であるグラフのパラメータとの関係を明らかにした。この構造理論を用いて、descendentをある意味で「豊富に」持つグラフをTerwilligerによる量子マトロイドの観点から特徴付け、分類を行った。これらdescendentはTerwilliger代数の理論と密接な関係があり、符号理論のAssmus-Mattsonの定理や極値集合論のErdos-Ko-Radoの定理に応用される。また、この研究はQ-多項式距離正則グラフ全体の成すある種の階層構造を明らかにするものである。なお、2005年にvan DamとKoolenにより発見されたtwisted Grassmann graphに関するErdos-Ko-Rado型定理がこの研究の応用として得られた。既存のErdos-Ko-Rado型定理のほとんどは非常に大きな自己同型群を持つグラフを扱っているが、twisted Grassmann graphは頂点可移ですらない。田中利恵氏との結果は既に出版されており、descendentに関する成果は2本の論文にまとめて投稿中である。特に、上述の階層構造の記述をQ-多項式距離正則グラフの研究に於ける新たなアプローチとして論文中で提唱した。
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