種数gの代数曲線とその上のtheta characteristicでその大域切断のなす空間の次元が偶数であるものの対のことを、種数gの偶スピン代数曲線という。本年度は、Udine大学のFrancesco Zucconi准教授と共同で、種数4の偶スピン代数曲線のモジュライ空間が有理的であることを示した。この結果は、以前にFrancesco Zucconi准教授と共同で、ファノ三様体をべき和多様体として記述する研究を行っていたが、その応用として得られたものである。ファノ三様体を記述するべく、三次元の極小モデル理論を駆使して研究をしていたのだが、それが、代数曲線のモジュライ空間の記述に有用であったのは意外であった。なお、任意の種数の偶スピン曲線のモジュライ空間については、その双有理型の粗分類が得られており、種数が小さい場合には有理的であると予想されていた。実際、種数が3以下の場合には有理的であることがすでに知られており、その次の種数4でも有理的なことが分かったことになる。 通常、ある種のモジュライ空間が有理的であると結論するのは細かい抽象的な議論が必要であるが、当該研究においては、三次元の極小モデル理論を用いて議論したためにより幾何的な証明が与えられたと考えている。
|