研究概要 |
本年度は、高々1/2(1,1,1)-特異点しか持たないファノ三様体Xのいくつかの例について、それらを反標準線形系によって重射影空間に埋め込んだものが,より大きな重射影空間に入っている多様体で非簡約形代数群が半等質的に作用しているものZの、線形な切断になっていることを示した。これは、向井茂氏による非特異ファノ三様体の等質空間の切断としての記述の一般化である。より具体的には、Xの種数をg、特異点の数をNとすると、(g,N)=(8,1),(7,1),(6,2),(6,1),(5,1),(4,2),(4,1),(3,3),(3,2),(3,1)の場合にZを見つけることが出来た。例えば、(g,N)=(8,1)の場合、Zは5つの加法群の直積と二次元射影変換群の半直積が半等質的に作用している。また、(g,N)=(4,2)の場合は、Xの重射影空間の中での余次元が4であるが、このような余次元4のファノ三様体に対するZの候補について、リード学派が可換環論の視点から詳細に研究していた。そのリード学派の研究との関連について調べるのは今後の興味深い課題である。すべての記述は非常に具体的であり、非特異ファノ多様体で代数群が半等質的に作用するものの上のベクトル束の射影化を双有理変換して得ることができる。この具体的な記述を通して、Zの統一的なとらえ方を見つけ、より一般のファノ三様体をも切断に持つような非簡約型代数群の半等質多様体のクラスを組み合わせ論的に分類する足がかりにしたい。そのために十分たくさんの例を見つけたと思っている。そして、最終的には、ファノ三様体のそのような記述法が、ファノ三様体の反標準線形系がデュヴァル特異点しか持たない元を含むというリード予想の自然な根拠を与えてくれると期待している。
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