研究概要 |
本年度は細野忍氏と共同で研究を行った.Vを5次元複素ベクトル空間としP^4=P(V)と書く. P(S^2V)の部分多様体である二次ヴェロネーゼ多様体の射影双対が五次対称行列の行列式で定義されるP(S^2V^*)の超曲面Hであることはよく知られている.しかし,Kuznetsov氏のホモロジー的射影双対性の観点からすると,二次ヴェロネーゼ多様体の割線多様体であるChow^2P^4とHを双対と見るほうが自然である.その一端としてP(S^2V^*)における一般の4次元線形空間PによるHの切断H'と,PのP(S^2 V)における直交空間P'によるChow^2P^4の切断Xの関係を研究した(現在も進行中).Xは非特異カラビヤウ三様体,H'は特異点を持ったカラビヤウ三様体になる.このときH'の二重被覆YでH'の特異点集合でのみ分岐するものが存在してYが非特異カラビヤウ三様体になることを証明しYの様々な不変量を計算した.またミラー対称性によりXとYの様々なBPS数を計算し,いくつかの場合にそれらがXとYの曲線の数え上げで解釈できることを示した.また,XとYの導来圏が同値であることも示した. この研究は当該研究者の研究目標であるファノ多様体の分類とは無関係に見えるがそうではない.まず,Chow^2P^4とHはファノ多様体である.また,それらは代数群の半等質多様体になっており,上記のカラビヤウ三様体は当該研究者の目指すファノ多様体の記述と同種の記述を持っている。上で述べたXとYの導来圏が同値だという結果は,群作用付きファノ多様体Chow^2P^4とHの双対性の一端と見られる.当該研究者は代数群の半等質多様体を用いて記述できるファノ多様体の例を21年度までに構成したが今回,細野氏との共同研究によって得た代数群の半等質多様体対の双対性という視点をそれらの例に持ち込むことは,当該研究者の最終目標であるリード予想の解決にとって重要であると考えている.
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