代数曲線上のベクトル束のモジュライ空間上には、直線束のモジュライであるピカール群上のテータ因子の類似として、一般テータ因子がある。一般テータ因子に付随する直線束の大域切断は一般テータ函数と呼ばれる。二つの異なるベクトル束のモジュライ上の一般テータ函数の空間が双対になる現象は、strange dualityと呼ばれている。 昨年度までで、曲線上のシンプレクティック束に対するstrange dualityを解決することが出来た。今年はそこで使われた手法を曲面上のベクトル束に対して拡張することを試みた。特異曲線上の局所自由でないねじれなし層の類似を曲面上の擬ベクトル束である、と思う類似のもと、曲線上の方物方ベクトル束の類似として曲面上でpinch構造を持つベクトル束という概念を提案した。変形理論を用いて調べてみると、安定曲線のモジユライの局所構造と擬ベクトル束のモジュライの局所構造が非常によく似ていることが分かった。この構造を用いて、射影平面上のベクトル束のモジュライに対するルポティエのstrange dualityを、レベルが1または2の場合に証明することが出来た。この内容は論文にまとめて現在提出中である。5月25日~5月29日にアメリカのノースカロライナ大学で行われた研究集会「Eigenvalue and Saturation Problems for Reductive Groups」に参加してこの結果の研究発表を行った。京都大学、九州大学の代数幾何セミナーにおいても研究発表を行った。 また、倉敷で行われたシューベルト計算の研究集会に参加し、シューベルト計算についての情報収集を行った。九州大学で行われた青木昌男氏による代数スタックの連続講義に参加し、代数的スタックについての情報収集を行った。
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