昨年度に引き続きeDL対応の枠組みの中で(古典型)アフィンヘッケ環の緩増加表現についての研究を行った。アフィンヘッケ環の緩増加表現の指標はいわゆる一般Springer表現を用いて記述できる為、特にLusztig-庄司アルゴリズムと呼ばれるアルゴリズムによって記述できる事が知られている。ところが、一般Springer対応にはパラメタを入れる余地がないためアフィンヘッケ環側から見るとパラメタを動かすと指標がどのように変わるかが分からないという点において不満が残るものであった。 今年度は昨年度アフィンヘッケ環に導入した緩増加表現を含む特別な表現の族である"Tempered delimit"達がアフィンヘッケ環のパラメータの変化によってどのように振舞うのかを決定した。このことから特に次のような事が従う:a)パラメタが十分大きかったり、また十分小さかったりした場合には緩増加表現の指標は簡単な形で書け、b)そこからパラメタが変化してゆくと(例えば次元が等しいといった意味で)アフィンヘッケ環のランクによって定める特殊なパラメタまでは連続的な変形を持ち、c)特殊なパラメタまではそのまま既約となり、d)さらに値を超えた時の緩増加表現(一般には別の表現になる)と同じ"パケット"に入り、e)そしてその"パケット"に属する既約表現の指標達は簡単な線形関係式を満たすという事が分かった。 特にe)の線形関係式は特殊なパラメタから見て片側の指標が分かるともう片側の指標が分かるという事を意味し、これによりLusztig-庄司アルゴリズムとは異なりパラメタを変化させたときに緩増加表現の指標を帰納的に計算してゆくアルゴリズムを得た。 この結果については現在Dan Ciubotaru氏、加藤翠氏との共著論文としてまとめて投稿中である。
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